Constipation -便秘‐

便秘とは

日本消化器病学会の研究部門が2017年に「慢性便秘症診療ガイドライン」を発行したのが、便秘に対しての日本での最初の治療指針となりました。その6年後、日本消化管学会が2023年に「便通異常症診療ガイドライン」を発行しました。もともと便秘というのは症状であり、病名ではありません。そのため両者とも「便秘」の定義として「本来排出すべき便が快適に排出できない、排便時困難感を認める状態」としています。さらに後者、新しいほうでは「慢性便秘症」と「症」という字をつけて病名とし、「便秘のために日常生活、身体に支障をきたす状態」と記しています。ですから硬便、ぽろぽろ便などの形的な変化、排便回数の減少は「便秘」と言う症状ではあるが、困ってないならば病気ではないということです。当院でも便が数日出ない、便がポロポロで固いから病気だとは考えておりません。ただ最初のページで紹介したように、当院でも重視しているのはご本人が何で、どういうことで困っているかです。困り方は人それぞれなので、こんなことくらいでと躊躇せずに、ご相談ください。

  

便秘の症状、訴え

  • 1日1回排便があっても、量が少ない
  • 便がすっきり出た感じがない
  • 便が硬くなかなか排便できない
  • 数日以上も便が出ない
  • 排便の間隔が不規則         など

  

便秘の体に対する影響

心血管疾患の発症・死亡リスクの上昇、腎疾患の発症、パーキンソン病の発症に関与し、長期予後に影響を与えるということが、科学的データ的にある程度証明されています。よく下剤の宣伝に使われる大腸がんの原因になるというのは医学的には証明されていません。むしろ文献検索では関係ないという論文が主流です。日本のガイドラインでは関連は不明とされています。便秘の功罪としては毒が吸収されることによる肌荒れや老化の進行、むくみ、冷え、月経不順などが言われますが、経験上まず関係はないと考えます。ただ便秘に対しての不安感、ストレス、うつ状態。こういう症状は上記の原因になりえますので、間接的には関与していると言えるでしょう。実際、便秘の治療で肌荒れなどが良くなる方もたくさん診てきました。

  

便秘のタイプ

* 弛緩性便秘

大腸自身の動きが弱くなってしまっています。
蠕動運動の低下でゆっくりしか動かないため大腸全体に便がたまってしまいます。
水分は吸収されるので便は硬くなります。

* 痙攣性便秘

腸を動かす神経のバランスが崩れることで、腸が必要以上に蠕動している。
または蠕動が弱くなっています。痙攣した腸は便をうまく排出できず便が硬くなってしまいます。

* 直腸性便秘

腸は問題なく便は直腸へと進みますが、そこからが出ない出せないタイプ。
便をだすタイミングが悪い、出せる便の量に達するのに時間がかかります。
下剤の乱用などで大腸の動きや直腸肛門の感覚がおかしくなってしまっているなど、習慣が原因であることが多いです。

  

便秘の検査法いろいろ

便秘にもいろんな原因があります。本来その原因によって治療法は異なるはずで、ただ下剤を飲めばいいというものではありません。合っていない治療法は治らないばかりか悪化させてしまうことさえありえます。
当院では機能的消化管障害の国際的研究機関である「Roma委員会によるRoma診断基準」に準じた以下の検査にて便秘の原因を調べ、それぞれの病態に応じた治療を行っています。

  

* 大腸通過時間検査 (腸管輸送能検査)

食べたものが便としてお尻から排出されるまでの時間を計る検査です。腸の動きを判定します。

* 直腸肛門内圧検査

直腸の感覚、便意の感覚が正常かどうか。息んだときの肛門の筋肉の動き、肛門の締まり具合をみます。

* カテーテル排出検査

便を押し出すときのお尻の筋肉の使い方、力の入る部分、便を押し出す腹圧がちゃんとかかってるかどうか、
そのタイミングが正しいかどうかなどををみます。

  

便秘の治療について

当院での治療のゴールはその人なりの自然な排便です。私は便を毎日出さないといけないとは考えてません。日数、頻度、間隔は人それぞれ違います。二日に一度でも三日おきでも問題ないと思っています。問題にするのはその時の満足感です。いい形、硬さの便をすっきり出す、出せることが大事と考えます。その根拠、理由も含めてご理解できるように説明いたします。便秘の治療のスタートは排便に関しての正しい知識です。そのうえでの実践、実際の治療になります。ある程度の段階までは内服も必要ですが、必ずだれでもが自然な排便を取り戻せると思っています。